研究概要 |
本年度は,これまで収集した文献・資料をもとに単著の論文「欧州協力独立連盟から欧州経済協力連盟へ」を執筆し,東京経済大学の紀要に発表した。本論文は2010年7月に社会経済史学会東北部会で行った「欧州統合における非政府組織の役割-欧州経済協力連盟を中心に-」と題する報告をもとに,当日受けた質問や意見も参考として執筆したものであり,1948年5月にハーグで開催されたヨーロッパ会議が契機となってそれまで欧州協力独立連盟と名乗っていた連盟が経済統合問題に専念することから欧州経済協力連盟に名称を変更し同年秋には正式にベルギー国内法にもとづく学術団体となった経緯を分析した。 また,本年度の夏休みにベルギーのルーヴァン大学文書館において一昨年度に続く第二回目の資料調査を行った。今回の資料調査においても同文書館に寄贈されている欧州経済協力連盟の中央理事会資料を調査し1949年に開催されたウェストミンスター経済会議に関する資料と1950年代前半の連盟に関する資料を中心に閲覧・収集した。現在は収集してきた資料を分析中であるが,連盟イギリス委員会(支部)が中心となったウェストミンスター経済会議においてヨーロッパにおける経済統合が本格的に議論され通貨統合にまで議論が及んだこと,しかし,この会議後,イギリスは欧州統合に距離を置くようになり1950年以降の欧州統合運動においてフランス委員会が中心的役割を担うようになったことがわかってきた。 こうしたフランス委員会の活発な動きは,1950年5月の仏外相シューマンによる石炭鉄鋼共同体の提案と連動しており非政府組織の統合における役割を考えるうえで重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去3年間の研究期間において2度の海外での資料調査を行っており,この点では順調である。また,研究論文も本年度に最初の論文を発表し,来年度もう一つの論文を発表する予定であり,おおむね順調に進展していると考えている。
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