研究概要 |
平成21(2009)年度は,「平成21年度科学研究費補助金交付申請書」の「研究の目的」と「本年度の研究実施計画」に記したように,各地での史料調査や聞き取り調査を実施した。 史料調査は,東京都をはじめ関東の各地のほか,仙台・函館・弘前など広範囲に及んだ。都内ではメーカーの史料管理部署での調査によって,メーカーの販社の設立・統合戦略などの意図や,販社設立の実情や,設立された販社の経営状況などについて詳細な情報を得ることができた。一方,各地の大学や公共図書館での調査によって,各地の石鹸・洗剤・化粧品の卸業経営の実情のほか,各地域の流通事情に関するさまざまな史料を蒐集することができた。 また,聞き取り調査では,メーカーの販社戦略を担った人々に対する聞き取りのほか,研究打合せで得た情報にもとづいて,北海道(札幌)で有力御店の経営者への聞き取り調査も実施することができた。この聞き取り調査では,調査対象の方から,文書史料では知り得ないような流通の実情や,各地の卸店経営者同士の情報交換の話題なども聞くことができ,大いに理解を深めることができた。また,メーカーの関係者とメーカー側の流通戦略を受ける立場との違いや,同じ卸業経営者の立場でも経営の見通しや行動に違いがあること,なども気付かされ,そうした違いの内容も多様であることを知ることができた。さらに調査対象の方から,有用な史料を提供いただいたことも思わぬ成果であったといえる。 以上のような調査にもとづいて,後に記載するような関東地域のメーカーによる販社戦略に関する論考をまとめることができた。今後は,今年度の調査で得た史料をもう少し整理し直して吟味し,さらに次年度以降の調査も加えることによって,研究を進展させることにしたい。
|