研究概要 |
22年度は、1. 労働移動と市場統合との関連を数量的に明らかにすること、2. 新技術・制度の導入・災害の影響と市場統合の関連を明らかにすることなどを目標とした。うち、「1」については、イギリスの機械工労働組合の移動資料を1865年~1914年まで撮影を完了し、そのうち1894年までのデータ・ベースを作成した。これは総計214,288件の全イギリスの諸都市間の労働移動データであり、労働者名・年齢・職種などが記録される重要性なもので、全体を計量可能な形で整理したものは本研究が初めてである。このデータをもとに、労働移動のパターン・労働移動と市場統合の関係について考察し、その一部を研究会・学会等で報告した。労働移動は近隣所地域間での移動が確認され、19世紀後半における移動率の低下が見いだされた。労働市場統合との関係は、目下のところ、強い関係性が見いだされずにいるが、地域・都市・指標の調整などにより、その関係性が見いだされることが期待される。「2」については大きく2点の進展があった。まず、日本については、明治期の大工組織の再編に関して、京都の大工会社総則を新資料として確認し、その内容の分析を行った。関西地域では大工の労働市場が分解する傾向にあったが、制度的にはそれに抗する動きがあったことが示された。イギリスについては、機械工の技術の標準化について、機械産業関連の技能伝播について、技能マニュアルに注目し、19世紀初頭から20世紀初頭までの技能伝播のパターンを整理した。
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