研究課題
ライセンシング・ネットワークは、単なる特許等知的財産権の使用許諾のネットワークを意味しているのではない。もっと広く、経済主体間のイノベーションのネットワーク、組織的プロセスとしてとらえる必要がある。そこで今年度は、主に組織力についての概念的考察を進めた。近年、イノベーションや製品開発の成否を組織能力に結びつける議論が増えているが、たとえば、発明や製品開発がうまくいく理由が組織能力だというのであれば、その組織能力の中身を明らかにしなければ、単なるトートロジーに終わってしまう。そこで、拙著『組織力』では「宿す」「紡ぐ」「磨く」「繋ぐ」のプロセスに整理して、組織力の中身について考察している。それは基本的に、組織的行動の進化のプロセスであり、昨年度研究した、技術コミュニティの進化プロセスがどうなっているのかを記述するための概念的な基礎をなすものでもある。これと並行して、従来、技術展開の方向性が技術コミュニティの力学によって決まったとされてきた半導体光露光装置についても再検討し、実は、事実誤認だったとの指摘を行った共著論文「半導体光露光装置は技術的限界を乗り越えたのか?」もまとめている。また、ライセンシング・ネットワーク全体に枠組みを与えるはずのものについても拙稿「ガバナンスの同型化と経営者の役割」で考察し、そこから派生する会社論・経営者論については拙著『ダメになる会社』にまとめている。概念的な整理を行った著書2冊の出版後、昨年度着手した文化変容の分離志向と同化志向を採用したマルチエージェント型のコンピュータ・シミュレーション・モデルに関する研究を再開し、また、分離志向と同化志向の測定尺度を用いた調査も継続しているが、十分なサイズのデータを集めるには、引き続き来年度も調査を進める必要がある。
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赤門マネジメント・レビュー
巻: Vol.9, No.8 ページ: 599-606
http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR9-8.html
巻: Vol.9, No.5 ページ: 295-321
http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR9-5.html
月刊監査研究
巻: Vol.36, No.13 ページ: 10-25
http://www.nobuotakahashi.jp/bibliograhy/index.html