研究課題
ライセンシング・ネットワークの研究を進めるうちに、ライセンシングや技術革新には、企業文化が大きな影響を与えていることがわかってきた。ところが、これまでは、たとえばNIH症候群(Not-Invented-Here syndrome)が悪しき企業文化として扱われたりするものの、その代表論文であるKatz and Allen (1982)では、プロジェクト・メンバーの在職年数の長期化によって引き起こされるパフォーマンスの低下のことを指し、雰囲気で「文化」のごとく扱うだけで、きちんとした分析は行われてこなかった(Takahashi & Inamizu, 2013)。かつての企業文化論(あるいは組織文化論)ブームのときには、「強い文化」(strong culture)が注目され、それに対する肯定的な主張が行われていたが、強い文化は技術革新やライセンシングを阻害するのではないかという疑問が生まれてくる。拙著『殻』(高橋, 2013)で明らかにしたように、ウェーバーの官僚制の比喩としても有名な「鉄の檻」(英訳語iron cage)は、ドイツ語の原語はゲホイゼつまり「殻」で、いまやパーソンズの誤訳だったというのが定説になりつつある。ゲホイゼのイメージは、一方的に拘束する檻ではなく、護符としての「殻」の陰に人間がしがみついているイメージで、殻の裏側では常に硬直性がつきまとうのだが、似たようなことは経営学でもコア能力/コア硬直性として指摘されている。こうした研究成果から、強い文化と革新が両立しうるのかという新しい研究テーマのヒントも得られた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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