本研究では、各種職能や部門が連携して価値創造を高める連動経営の構築と破綻のダイナミズムの解明に焦点があった。平成21年度における研究焦点は、3つあった。それらは、 1. 従来の経営学文献の研究を当該研究者が構築してきた戦略的マネジメント・サイクル(以後、SMCと略称する)の枠組みに基づいて整理する 2. そのダイナミズムに関する実証的研究のためのデータベース構築 3. 海外研究者との共同研究 1. における研究成果としては、従来の主要文献(本)からの抽出をおこない、SMSの枠組みに沿った整理をおこない、従来の研究で指摘されている関連要素や要因を抽出したことが挙げられる。しかしながら、当該研究で問題の焦点にしている上流工程におけるプロセスに関する研究は十分におこなわれていないということも明らかになった。連動経営の経年的持続性を左右する工程であるにも拘わらず、十分な研究がなされていないことの感触を得た。2. のデータベース構築では調査設計を参加国の主要な代表研究者と共にスペインおよび日本において共におこない、当該研究課題に関連する実証のための質問項目などを反映させたことである。現在では10カ国の参加国があって、それらの意見調整が大きな課題であった。まだ設計は完了せず、最終調整の段階で継続中である。調査そのものは現状の企業の状態から平成21年度段階では実施は難しかった。3. における海外研究者との共同研究では、スペインに夏の間滞在し、エアバス社などへのヒアリング、若干の研究者との討議、そしてセビリア大のマチュカ教授との共同研究をおこなった。また米国のフリン教授(インディアナ大)との共同論文を書き、現在はある学術誌へ投稿中である。学会では、スウェーデンのイエテボリで開催されたEurOMA学会(European Operations Management Association)において上記1の中途の研究成果を報告した。そこではフロアーの反応から意味ある研究であることがうかがい知れた。
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