平成24年度の研究課題は二つあった。第1は、国際共同研究の第3回目の調査の実施とデータベースの構築、第2は、連動経営の構築と破綻に関する研究の推進である。第1の実施では、質問項目の日本語版の作成、調査依頼、回収を実施した。しかし、現在時点で予定の30社の調査データの回収は未達成状態であり、現在依頼と回収の活動を継続中である。現在の日本企業の状態が悪いうえ、近年のグローバル化にともなった生産とサプライチェーンの再構築を実施中で、調査の意図に沿えないという回答が多く、継続せざるを得ない。秋頃までに所定の30社のデータを回収する再計画中である。 第2のテーマでは、この研究焦点に沿った学会発表と論文化を行った。その論文は2012年に開催されたThe Fourth World Conference on Production and Operations Managementにおいて発表し、大会後の学術雑誌発刊のための投稿招待論文に選ばれ、現在投稿中である。これは、連動経営を駆動する戦略的マネジメントサイクル概念を2011年に提唱したが、その構築の鍵として2012年度では絶対的サプライチェーン戦略という概念を示し、それを実証的に示したものである。リードタイム、ジャストインタイム制御、適合品質、需要の安定性確保という4つのサプライチェーンマネジメントの焦点を追求し続けることが、連動経営のポイントになる戦略とオペレーションの融合にとっても基本となることを提示した。戦略とオペレーションの乖離が連動経営の破綻につながり、その連動性確保のための調整活動の負荷を最小にする行動が焦点になる。絶対的サプライチェーン戦略はそのような調整を最小にする行動原理であり、それを追求する風土的な行動様式が連動経営の持続のために望ましいという知見が本研究の最大の成果ということができる。
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