本研究課題の前の科研費研究では、連動経営は企業ビジョン形成-戦略策定-オペレーション実践-成果へのオペレーションの結びつけという戦略的マネジメントサイクルがそれぞれの段階で高い活動水準を持続することという命題を提示し、それを実証的に示した。本課題研究では、またその戦略的マネジメントサイクルを構築することの背後に戦略的行動側面(ビジョン形成、戦略策定)とオペレーション行動側面(オペレーションの実践、それらの経営成果への結びつけ)を統合することが最大の焦点で、現実の経営でもその統合の困難さが大きな経営課題として認識されてきた。本研究では、その統合実践においては、戦略的側面の最大の焦点が提供する製品の価値と市場の策定を戦略的側面の中心的課題と位置づけ、さらにオペレーション行動側面ではサプライチェーンマネジメントが中心的課題と考え、それらの整合的配列が戦略とオペレーションの統合の課題の本質にあるという問題設定の上で、その連動性構築(戦略とオペレーションの統合性確保)の問題を研究した。それら経営の二つの側面の整合性確保の調整における難しさは、不確かさの高い状況における戦略決定に対する組織的コンセンサスの欠如と、現在時点で競争活動を実際におこなっているオペレーション活動の重要性が相対立する状況を醸し出し、調整の難しさの原因になっていることが多い。本研究ではその調整のための経営的負荷をできるだけ少なくすることが調整を可能にする経営要件と考え、そのための日常的な経営的努力の焦点を示す絶対的サプライチェーン戦略という概念を提示し、それらを追求する風土が備わっているべきことが戦略とオペレーションの整合的調整あるいは統合を容易にするという仮説を提示し、その実証分析をおこなった。結論的にはその仮説の有意性を確認した。さらに絶対的サプライチェーン戦略を実践する程度の高い企業は、職能横断的な製品開発体制において秀でていることも示した。
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