研究概要 |
本研究は,1990年代以降、とくに資本市場のグローバル化の影響を受けてドイツにおいても経営者の監視・コントロールのあり方を問い直す動きが高まっていることに注目しつつ、伝統的なドイツ型企業システムないし「企業統治」(Corporate Governance:Unternehmungeverfassung)システムが徐々に進化を遂げており、これがドイツの伝統的な労使共同決定や労使関係制度、さらには経営者昇格のキャリア・パターンにも大きな影響を及ぼしていることを実証的に解明することを目的としている。 本年度は,研究初年度において行われたドイツのインタビュー調査と資料収集を踏まえて,裏面の「研究発表」からも確認できるように、研究代表者及び研究分担者による一連の論文等の執筆や関連学会での研究発表という形で具体的成果を生み出してきた。こうした研究成果の公表に先だって研究会(2011年度は5・7・10月の3回)を開催し,各メンバーの研究成果の確認と意見交換を行った。こうした研究交流を深める中で我々研究チーム内では,以下のような共通認識が生まれている。すなわち,1)ドイツの企業システムは,確かに経済のグローバル化や技術革新の加速化に伴い大きく変容しているものの,基本的には従来のネオ・コーポラティズム体制(労使共同決定や銀行の役割,さらには政・労・使の協調体制)が維持されている。2)しかしこうしたコーポラティズムを支える各種制度はそれぞれの環境条件の変化に対応して変化してきている。その場合,各種制度の「共進化(co-evolution)」が進んでいる。 こうした共通認識から具体的に各種制度の変容の在り方を具体的に明らかにすることが今後の我々の研究課題となる。
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