研究課題
本研究の対象は、公益性志向経営(事業経営)の典型と考えられる《原子力発電企業》である。そこには、「電力自由化」時代を迎え、私益性(経済性)の追求と公益性の追求との間で動揺する対象企業の姿がある。本研究の目的は、そうした対象企業の社会的責任と公益性志向経営の研究を、哲学的・理論的および実証的に行うことにある。そのために本研究は、CSR論や経営倫理学、HRO研究の知見を活用しつつ、組織と社会との間にある「安全」と「安心」に対する意識のギャップを把握し、そうしたギャップが事故や不祥事として顕在化してくる組織化過程を理解するとともに、それらを解決するための理論的基盤を探り、実際の企業への適用可能性を考察することを目指している。平成21年度は、上記の目的を達成するための足がかりとして、対象企業を可能な限りトータルに捉えるために、既存のCSR論や経営倫理学、HRO研究のサーベイや問題点についての研究会活動を精力的に行った。その過程で、既存のCSR論や経営倫理学の理念的・規範的研究への傾斜、また既存のHRO研究の現場作業レベルでの実証研究への傾斜、という問題点を確認した。またその他の観点として、システム障害や内部統制といった組織内部の問題の洗い出しや、投資家や消費者、地域社会といった組織を取り巻く諸環境との相互作用(環境コミュニケーション)の問題の洗い出しを行った。また、閲覧可能な範囲での内部資料や予備的な聞き取り調査から、原子力発電企業には様々な関連企業や協力会社が出入りしており、それらを総体としてみたときに経営トップから現場に至るまでの「安全」や「安心」に対する意識の統一に、大きな困難があることも確認した。こうした成果を踏まえ、今年度は聞き取り調査等の具体化に取りかかる予定である。
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企業会計 第62巻第2号
ページ: 108-119
『経営論集』(明治大学) 第57巻第1・2号
ページ: 13-36
Informatics Vol.3 No.1
ページ: 37-46
企業会計 第61巻第9号
ページ: 33-41