1、理論的枠組みの構築 研究代表者は、アーカイブデータを利用して、(1)同族間承継と第三者承継の比較、(2)事業承継後の企業業績、(3)企業価値を左右する「営業権」の評価、の3つの実証研究・多変量解析を実施し、それぞれ(1)日本経営学会(H20年9月)、(2)日本経営財務研究学会(20年9月)、(3)日本財務管理学会(20年10月)の全国大会において報告済である。これら学会報告での議論と分析結果を踏まえて、関連する先行研究の更なる精査を行いながら、事業譲渡の企業価値評価問題についての理論的枠組みの構築を行った。 具体的には、企業価値の概念を整理し、事業承継にあたって求められる企業価値の向上についての先行研究をレビューするとともに、本研究との関わりを整理した。また、事業承継の分析フレームワークを、海外既存文献をもとに構築した。 2、実態把握と事例研究の作成 本年度は、定量的データ分析よりも、定性的研究による実態把握を中心に行った。まず、事業承継を控えた7社の経営者に対してインタビューをおこない、事前にカテゴライズしていた項目に分けて整理して実態把握に努めた。加えて、事業承継段階が異なる3社を取り上げて事例研究を行い、先に構築した分析フレームワークに従って分析を行った。また、まとめの段階には入っていないものの、追加的なインタビュー調査を、特に後継者に対して行っており、研究2年目となる来年度にまとめていく予定である。
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