地域に群生する企業やNPOといった異種組織が、地域固有の社会課題の解決のために協働することが地域学習ひいては地域イノベーションにつながっていくメカニズムを分析するために、昨年度に引き続き福島県いわき市、広島県福山市、山形県山形市、東京都下などのNPOや企業を調査した。今年度はとくに地域における古着やペットボトルなどの製品リサイクルに関係するNPOや企業の現状、そして行政-企業-NPOの協働による製品リサイクルの実態を調査した。その結果それぞれの地域では、多様な組織が出会い相互学習することでリサイクルという社会課題を解決しているケースが多く見られた。また古着リサイクル活動という社会課題を共有する複数の地域NPOが、地域の境界を超えて相互に競争しながらも学びあう側面も明らかになった。たとえば、古着リサイクルという共通の課題解決を目指しているザ・ピープル(いわき市)、WE21(神奈川県)、エコメッセ(東京都)の3つのNPOは、相互に他のNPOとの差別化を図りながらも様々な交流を通じて相互に学習していることが明らかになった。さらにこうしたNPOに協力している企業の協働動機や協働内容についても、個々の地域NPOによってかなり大きな差異があることも明らかになった。NPOの活動を支援していくべき行政機関が実際に行っている機能についても差異があることも興味深い。地域の特定のフィールドのもとで異種組織の協働がどのようにして生じるのか、その協働はどのような段階を経て進化発展していくのか、さらには協働の結果として何が生まれ何が変わったかについて組織間関係論や地域イノベーション論の枠組みのなかで整理する作業を継続中である。
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