研究課題
今年度は、ソーシャルキャピタルをキーコンセプトとして、ローカルイノベーションとICT活用に関する研究を行った。初年度に実施したアンケート、及び関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構の共同利用データを用いて実証分析し、さらに企業に対してヒアリング調査を行った。この成果を海外の学会で発表し、論文として公刊した。主な研究成果は以下の通りである。(1)中小・中堅企業は、地域企業との間で醸成された結束型のソーシャルキャピタルと地域外の企業との間に醸成された橋渡し型のソーシャルキャピタルを併せ持つことで、企業の知識創造プロセスが動態化されやすくなり、その結果として、プロダクトイノベーションが促進される。(2)ソーシャルキャピタルの醸成には、ステークホルダーとの相利共生関係の形成や対面接触によるコミュニケーションに加えて、コミュニケーションメディアとしてのICTの活用も重要な役割を果たしている。(3)コミュニケーションメディアの一例であるソーシャルメディアも、プロダクトイノベーションを促進させる要因である。ソーシャルメディアは、製造業よりもサービス業のプロダクトイノベーションに有効である。ただし、ソーシャルメディアを活用するには、それを利用するメンバー・間にソーシャルキャピタルの認知的側面である信頼や互酬性の形成が不可欠である。このようにソーシャルキャピタルとソーシャルメディアの活用は、相互補完的な関係にある。これら一連の成果から、ローカルイノベーションシステムを構築するには、地域内外での複合的な企業間ネットワークを形成することが重要であり、その際、ソーシャルメディアなどのICTを巧みに利用できるようにICTケイパビリティを高めていくことが必要であることが検証できた。
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