研究概要 |
本年度の研究目的は、既に開発したワーク・ライフ・バランスに対する労働者の自覚的評価尺度の精緻化と、その尺度を用いて、経営的効果の存在についてのより詳細な検証及び、企業や自治体が導入、展開し始めている現在自社内に設定する両立支援関連制度等の有効性を検証することにある。 前者の課題については、「時間的次元」「精神的次元」「経済的次元」に、新たに「体力的次元」を加えた4次元の測定空間として完成された。この4次元尺度を用いて、無作為抽出の1095標本(民間正規被用者及び公務員)に対する定量調査を行い、各尺度の信頼性について分析を行い、検証できた。また、これらの尺度で観測された従業員の自覚的WLB評価と個人属性(性・年齢、家族構成等)、労働実態(労働時間等)との関係性についても論理的な適合性が確認された。 後者については、ワーク・ライフ・バランスに対する従業員評価と最も関連性が強いと考えられる福利厚生制度との関係性を西久保(2007,2008)で採取された定量データと同等の統計的検証を行い、制度利用がワーク・ライフ・バランスの自覚的評価に好影響を及ぼすことが明らかとなった。加えて、ワーク・ライフ・バランスによってもたらされる経営的効果として新たに「集団凝集性」を設定した調査データを得ることが出来た。この組織効果である集団凝集性との関連性が今後の分析課題となっている。個々の制度評価についても、両立支援制度について22種、福利厚生制度について46種類を採用し、定量調査の対象としてデータを得ることができた。このデータを元に制度単位での、経営的効果上の有効性に関する検証を最終年度の分析課題とした。
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