研究概要 |
本研究の目的は,ナレッジワーカーの管理職(プレイング・マネジャー)の負担を軽減する「ポスト成果主義的人事制度」の内実について,フィールド・ワークによって明らかにすることである。平成22年度の研究実績の概要は,以下の3つに大別できる。第1に,プレイング・マネジャーの疲弊問題とその解決策について,民間企業の人事担当者を集め、グループ・インタビュー形式でデータを収集した。特にプレイング・マネジャーの管理能力(部下の成長面や感情面への配慮)を再教育することが有能な部下を育成し,長期的にはプレイング・マネジャーの負担軽減に繋がることが見い出された。第2に,病院組織における人事評価面接の質的分析と管理職による部下への支援行動の量的分析である。第1の研究結果から導出された「部下に対する上司による配慮の実態解明」を目指して,人事評価面接の映像データを分析した。オープンとクローズドなクエスチョンの選択的活用など,上司が部下に提供する支援行動にはいくつかのパターンが確認された。また,そうした支援を受容している部下ほど,職務満足や組織コミットメントなど肯定的感情を高めていることが質問票調査から判明した。第3に、民間企業の人事担当者を対象に,人事制度の複雑化に関する量的調査を実施した。集めたデータを多面的に分析中であるが,現段階での主要な発見事実から,HRMの複雑度が高まると人事による他職種とのコミュニケーションの程度が増加し,ひいては人事の仕事が増えることに対するやりがい,HRMの部門内評価,人事の仕事への満足の程度がそれぞれ高まるものと解釈される。この結果より,他職種コミュニケーションを通じて,HRMの複雑度に対する人事の認知を変化させ,人事の肯定的感情が高まる可能性が示唆される。
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