日本の1地方工場からのスピンアウト企業群を調査した結果、製造プロセス特化型のスタートアップは勤務期間に「起業機会を発見」し即座に起業し、製品開発特化型のスタートアップは「起業機会の創造」を目指す傾向があった。前者に比べ後者はより多くの時間を要し起業の準備に時間が要することがわかった。共通点として母体企業勤務期問において、起業家は自ら進んで複数の職能習得を望む傾向が示された。このスピンアウト群ではプロセス特化型が1993年前後、研究開発特化型が2002年前後に集中していた。後者は前者に設計・加工・製造などを委託しており、それは後者の研究開発の基盤と位置付けられていた。それが後者の起業を側面支援していた。これら企業群は同じ企業文化で育ち、相互に母体企業を媒介とする信頼関係を構築している。それがスピンアウト企業群のネットワーク構築に寄与しており、ネットワークの外部からの受発注を獲得する強みなっていた。また、本研究より、一定数の企業群が同時期に相補的に起業した場合に「起業機会」を有効に活用する可能性が高まる可能性が示された。これについては今後のより詳細な分析により明らかにしていく必要がある。
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