今年度は、企業のCSR経営の課題が、戦略的CSRの実践、つまり、本業と社会における課題の接点における活動を行うことによって、企業と社会の双方に価値を生み出すようなCSRをどのように実践していくかということが先進的CSRを実践する企業にとって目標となってきていることから、社会的課題をビジネス手法を通じて解決しているソーシャル・エンタープライズの活動に注目し、一般的営利企業がその活動からどのようなことを学ぶことができるかを考察した。 また、日本における先進的ソーシャル・エンタープライズへのアンケート調査結果を分析し、その特徴や課題について検討した。日本において、ソーシャル・エンタープライズの定義が定まっているとはいえず、組織自体も自らをソーシャル・エンタープライズと認識していないケースも多い。したがって、これまで、ソーシャル・エンタープライズへのアンケート調査は、ほとんど行われてこなかった。しかし、今回、全国的な調査を行うことによって、先進的な組織においては、調査前に想定された事業性における課題は比較的小さいものであることも明らかとなった。さらに、組織を率いる社会起業家たちの活動とフローについての関係性についても考察を行い、社会起業家たちは、ソーシャル・エンタープライズでの活動から、成長感や達成感等、フロー体験の特徴と一致する感覚を獲得していることがわかった。 その他、明治時代において自由民権運動が行われた高知県におけるソーシャル・エンタープライズと中間支援組織を訪問し、その活動について情報収集した。コミュニティ・ビジネスとして先進的なビジネス・モデルを構築し、地域社会に価値を提供し、かつビジネスとして成功している事例なども存在していることがわかった。
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