本研究の目的は、制度移行期におけるメタナショナル企業モデルの理論的検討である。 制度移行期では、現行制度の継続保持と制度移行が同時に進行する分離行動となる場合も少なくない。多国籍に展開した製造業は、本国で形成された企業制度を各国に移転・適用・適応することによって優位性を発揮してきたが、制度移行期の企業制度は分離行動にとどまらず、新たな企業制度の創造的破壊が求められる。 試行的にメタナショナル企業モデルをビジネス・アーキテクチャの視点で検討してみると、メタナショナル企業は、国際的な拠点に分散配置された専門特化企業をベースに企業間国際分業が行われている産業、たとえば半導体やハードディスクなどのキーコンポーネントを提供する企業に見出せる。メタナショナル企業の属する産業のビジネス・アーキテクチャは、企業間国際分業を通じてグローバルに統合化されたシステムのサブシステム(モジュール)として存在し、複数のサブシステム間の相互依存関係が形成されている。本国の企業制度を必ずしも強みとしてグローバル競争しているのではなく、世界各国に点在するイノベーションにアクセスし、それを汲み上げて新しいイノベーションに繋げることのできる専門的知識を活かした新しいタイプのグローバル企業である。 第一段階と位置づけられる本年度の研究では、フィリップス社やサムスン電子などのキーコンポーネントや部材産業および完成品組立産業の企業データを解析した。
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