研究成果としては「国際ビジネス研究」という学会誌に掲載が決まった論文と東京大学の博士号取得論文がある。まず、国際ビジネス研究に掲載された論文の問題意識はモジュラー型製品であるトラックを差別化するため、製品の中核・一般・顧客仕様サブシステムの内部構造と製品戦略を企業の資源と環境に合わせ、どのように組み合わせれば良いのかという点である。この問いに答えるため、韓国の現代自動車・タダ大宇および中国の一汽解放・中国重汽・春蘭汽車を取り上げ、事例研究を行った。その結果、モジュラー型製品を差別化するためには、企業の資源と環境に合わせ、中核・一般・顧客仕様サブシステムの内部構造およびプロダクトアウト戦略・マーケットイン戦略・カスタマーイン戦略を組み合わせる必要があることが明らかとなった。また、東京大学の博士号請求論文では外部環境が組織間システムの形成に及ぼす影響をある程度取り除くため、中国市場を取り上げて、一汽VW、天津トヨタ、北京現代の競争戦略が階層的分業の組織間開発システム、組織間生産システム、組織間契約システムの形成にどのような影響を及ぼすのかについて調べた。その結果、次の点が明確になった。 本研究の分析結果をまとめると、次の通りである。 外部環境の影響が組織間システムの形成に及ぼす影響をある程度取り除いた状況でも、自動車メーカーの競争戦略は自動車メーカーと1次部品メーカーの間の組織間システムの形成に影響を及ぼす要因の1つであった。 ただし、階層的分業の下位階層にある2次部品メーカーの多くは開発能力を持っていない貸与図部品メーカーであるため、1次部品メーカーと図面の設計を行わなかった。そのため、1次部品メーカーと2次部品メーカーの間では本格的な組織間開発システムが形成されていなかった。したがって、外部環境の影響をある程度除去した状況で、自動車メーカーの競争戦略が1次部品メーカーと2次部品メーカーの間の組織間システムの形成に影響を及ぼすところは、組織間生産システムと組織間契約システムのみであった。
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