昨年度に引き続さ、モチベーション、組織社会化などに関わる先行研究の読み込みと分析を行い、理論的な整理を行った。特に自治体職員の倫理観の形成や社会化の過程で、文化が重要な役割を果たしていることに鑑みて文化に関わる文献を幅広く渉猟した。また、神戸大学大学院の加護野忠男教授からは貴重なアドバイスをいただいた。この研究を通して、公務員の行動特性やパーソナリティについて、いくつかの仮説を発見した。合規性の尊重や慣例重視という自治体職員の行動特性は文字通り組織社会化のプロセスの中で形作られていることが明らかとなった。 また、自治体の担当部局への聞き取り調査を行い、人材育成の体制や基本的な考え方の特徴を抽出する作業を行った。岡山県、香川県では、職員研修所の機能が縮小され、職員研修の相当部分がアウトソーシングされている状況が判明した。福岡県でも同様の傾向があり、都道府県レベルの人的資源管理の一つの傾向を捉えることができた。これに対して、市役所レベルでは、職員研修所などが直接研修などの企画に当たる体制をとっているところが多く、平成23年度には各自治体に対するアンケートを行うなどしながら、全国的な傾向を把握したい。 研究成果の発表については、自治体職員向けの実践的な研修プログラムの試行を兼ねて熊本県下自治体の職員(34名)を対象に熊本県立大学CPD(Continuing Professional Development)講座を開講した。自治体現場の職員のニーズに応えることのできる研修カリキュラムとして、ワークショップ、シミュレーション・ゲームなどの参加体験型のプログラムを用意するとともに、関係教員の協力を得ながらマーケティング、企業戦略など組織経営に関わるプログラムも組み入れた。受講者からの評価は非常に高かった。この成果をもとに時代に即応できる自治体職員研修のモデル構築に取り組んでいきたい。
|