本研究課題は、多国籍企業論や国際ビジネス論の分野ではフロンティア的な性格であるために、その研究を遂行するためには、まず広範な関連理論(グローバル競争戦略論、イノベーション論、ネットワーク論、知識マネジメント論など)をレビューし、その応用可能性を検討する必要がある。次に、本研究のための仮説、モデル、分析フレームワークを構築し、実証研究を行う必要がある。このため、今年度は、前半は本課題に関連する諸理論をレビューし、それらの限界や応用可能性を研究した。そして、主に日系多国籍企業に対する実証研究のための仮説、モデル、分析フレームワークを構築することを試みた。その結果、日系多国籍企業の新たなグローバル成長戦略、新規事業開発、事業ポートフォリオ・マネジメント、オープン・イノベーション、グローバル・アライアンスの役割、グローバル組織・人材開発を中心に、パイロット調査のための仮説、モデル、分析フレームワークを構築することができた。 次に、これらの仮説、モデル、および分析フレームワークを用いて、中国(広州、香港など)とイギリスに進出している日系多国籍企業を対象にして、現地でのパイロット調査を試みた。この調査結果については、現在整理・分析中であるが、次年度の調査研究のベースとなる事実や知見が得られたと思う。今年度は、このような研究を通じて、その一部の成果として「日本の消費者金融企業のアジア進出戦略の課題-香港、台湾、タイを中心にして-」(パーソナルファイナンス学会誌に所収)や「国際経営の革新と異文化経営」(『異文化経営の世界』中央経済社刊に所収))を発表した。
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