本研究課題は、多国籍企業や国際ビジネス論の分野ではフロンティア的な性格であるがゆえに、その研究を遂行するためには広範な関連理論のレビューはもとより、仮説、モデル、分析フレームワークを構築し、それらを用いて実証研究を行う必要がある。 今年度は、研究課題の関連理論をさらにレビューすると同時に、昨年度に構築した仮説、モデル、分析フレームワークを精緻化し、それらを用いてシンガポールに進出している日系多国籍企業(エレクトロニクス、建機、商社、建設業など)の地域本社を訪問してヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査の主な内容は、そのアジア地域における新規事業開発、地域本社の新しい役割、アジア企業とのアライアンス、アジアにおける人事管理システム、グローバル人材の育成などであった。この結果、シンガポールにおける日系多国籍企業のアジア新興市場に対する新しい役割、新規事業開発、新しい国際人事システムやグローバル人材の育成方法などが明らかになった。また、日系多国籍企業を対象にして実施するアンケート調査の質問項目に関するフレームワークも作成した。 また、昨年の7月と今年の3月に、パリと台北で開催された経営学と多国籍企業に関する国際大会で、研究課題に関する研究成果の一部を発表した。さらに、研究成果の一部を『桜美林経営研究』(創刊号)で、論文(タイトル:Collaborative Innovation for New Growth of Japanese MNCs: On Organizational Transformation and Human Resource Development)という形で発表した。
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