本研究課題は国際ビジネス論や多国籍企業論の分野ではフロンティア的な性格であるがゆえに、これまで関連理論のレビューを行うと同時に、フィールド・サーベイのための仮説、モデル、分析フレームワークを構築し、研究活動を行ってきた。 今年度は、これまでの研究成果を2つの学会(国際戦略研究学会と国際ビジネス研究学会)で発表するし、また仮説、モデルなどを検証するために国内外(東京、大阪、イギリス)で、数社の日系多国籍企業でヒアリング調査を実施し、さらにアンケート調査(500社に送付)を試みた。その結果、日系多国籍企業の新たな成長や国際競争力の強化には、メタナショナル経営を推進し、グローバル・アライアンスを通じた新規事業開発が重要であるとともに、それを推進するために新たなイノベーションへの挑戦、組織構造・文化の変革、グローバル人材の育成が不可欠の課題になっていることが明らかになった。具体的にいうと、日系多国籍企業の新たな成長や国際競争力の強化には、アジア新興国市場での新規事業開発、そのための探索型イノベーションへの挑戦、アンビデクステリティ型組織の構築、バウンダリー・スパナーのようなグローバル人材の育成が大きな課題になっていることがわかった。このような研究は、わが国ではまだほとんど研究されていないので、今後深く掘り下げて研究していく必要がある。 今年度は、このような研究活動の成果の一部を「グローバル・アライアンス戦略のダイナミズム-競争優位の構築の視点から-」(『桜美林経営研究』第2号、3月発刊)、「日系多国籍企業の新規事業開発と組織・人材マネジメントの変革に向けて-アンビデクステリティ型組織の構築との関連で-」(共著)(『世界経済評論』5・6月号、5月発刊)の2つの論文で発表した。
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