研究課題
本年度における理論研究の成果は以下の2点に要約できる。本年度前半の理論研究では、親会社の国籍、知識移転、HRMの相互関係について検討した。伝統的なSHRMの理論によれば子会社HRM・HRDには親会社のグローバル戦略が強く影響する。一方、各子会社による多様なホスト国への環境適応にはフレキシビリティの概念が重要である。特に、親会社がリソースを持ち合わせない経営領域、現地市場の影響を強く受ける領域については子会社間の交流や現地関連機関との交流を通じた新しい組織知の開発や本社由来の知識の修正という形でフレキシビリティが達成される。しかしながら、MNCの統合という点では、行き過ぎたフレキシビリティはマイナスとなる。MNCはその許容範囲をコントロールすることで、全体の統合状況をたもとうとすると理解された。この結果は、21年8月に第15回IIRA大会報告で公開した。理論研究に関する第2の要点は、制度論的立場が強調するホスト国の影響とMNC内での情報交流についてである。最近の親会社一子会社間の知識移転に関する研究については、親会社からの知識移転のみならず、子会社からの知識移転についても検討されるようになっている。関連する研究成果のリビューによれば、子会社の情報収集、およびそれに基づく処理能力は重要な検討課題である。サービス営業といった領域では、日系多国籍企業にドミナンスエフェクトが働くとは考えられておらず、これらの拠点がどのような実力を持つかによって、親会社子会社間の情報交流や、HRMの同型化プロセスに大きく影響するものと考えられる。こうした理論研究の成果を受けて、本年度後半においては、オーストラリアおよびシンガポールにおける日系企業の活動の進展及び現在の投資・経営状況に関する文献研究に加えて、シンガポール・オーストラリア両国における日系企業の動向とナレッジシェアリングを引き起こしそうな活動について予備的な聞き取り調査を行った。これらに関する結果は、2010年7月に開催されるASAA大会、およびメルボルン大学におけるセミナー報告の形で公開する。
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