研究課題/領域番号 |
21530407
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
細萱 伸子 上智大学, 経済学部, 准教授 (50267382)
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キーワード | HRM / MNCs / HRD / SIHRM / Knowledge Transfer / Embedded / Organizational fields / Network |
研究概要 |
本年度の研究では、前年度に着手した理論研究を整理し、実際の実証研究を行う際の枠組みを構築することに注力した。特に、子会社能力の構築に現場のマネジャーが果たす役割が大きいという経験的理解について、その理由を仮説化し、検証と操作化をに向けたキー概念の特定を試みた。できる援用した理論は、「グローバルHRM」、「制度派HRM」、「ネットワーク理論」の3つである。それぞれの理論の特徴を整理し、実際のMNCで発生する制度問題にアプローチする際の複数のレベルの相互関係を明らかにした。現実のMNCにおける制度は、グローバル本社から移管されるものと、ローカルな状況に対応して開発されるものとの2種類がある。グローバルHRMの理論は、基本的に本社からの制度移管とその効果発揮に向けた議論であることが多く、本研究の目指すローカルな競争力を生み出すための制度としては、不十分であることが多いものと予測される。制度派HRMの理論は親会社本国の制度環境が子会社の制度環境と不一致の場合の子会社内での抵抗を説明する議論である。したがって、上からの移管と下からの抵抗や修正というマルチレベルの視点を強調するものの、下からの抵抗や修正がどのような準拠枠組みで引き起こされるのかというプロセスやその妥当性に関する議論は十分になされているとはいえない。ネットワーク理論からは、状況への埋め込みという概念が示すように、プログラムの妥当性、したがって成否はネットワークを組んでいるパートナーとの関係で決まるということが示唆される。つまりMNCの制度が世界的に定着するかは、特定の子会社が埋め込まれている現地の制度的文脈とそこから導き出される判断による。その意味で、受け入れ側社会のマネジャーの役割が大きい。また操作化に向けては、マネジャーの埋め込まれる現地の制度的文脈の具体例を集め、パターン化することが重要な課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の調査、特にシンガポールにおける現地調査が思うように協力者の確保ができず、延期されているが、一方、来年度以降に企画していたオーストラリアの研究者との交流が先行してすすんでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は理論研究のウェイトを下げ、調査研究における理論研究の成果の応用に集中する。年々、企業側の調査協力者確保がむずかしくなっている問題に対処するため、2011年度に購入したデータベースからの情報を活用し、効率化を図る。また、現地の研究者との交流を深めるため、シンガポールにおける経営系の学会で報告を試みる。
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