国内における人口減少、事業環境のグローバル化により、多様な人材をいかすことが企業の持続的競争優位獲得の上で重要になってきている。組織において、性別・国籍・年齢の多様な人材が増えてくるにしたがって、それらの多様性をいかす能力を備えた管理職の存在が不可欠である。 本年度は、次年度以降に向けて分析対象を明確化すべく(1)多様な人材活用をビジネス成果にむすびつけている企業における、人事担当者へのヒアリング調査、(2)海外の研究者との意見交換を行った。 (1)にかんしては、多様なメンバーから構成される組織・職場を効果的にマネジメントし、業績面でも高いレベルで達成し続けているリーダーがどこに存在し、どのような特性をもち、さらにはどのような育成プロセスをたどっているのかを調査した。その結果、次のようなことが明らかになった。(1)環境変化の激しい職場で、その存在が顕著になっている。(2)当該リーダーは自己の役割・求められる成果を把握しており、多様なメンバーを協働させる上でのビジョンづくりに長けているという特性を持っていること、(3)そうしたリーダーの育成プロセスは、企業が当該リーダーに求める成果(成果尺度)によって異なっている。 (2)にかんしては、次のようなことが明らかになった。(1)異文化対応能力(新たな文化に直面した際に明らかになる能力)と多様性をいかして実際のビジネス成果につなげる能力とは、多くの部分で概念が共通しているものの、後者は前者に比して、より高次の問題解決課題(敢えて異文化間でコンフリクトを生じさせることによってイノベーションを喚起する、等)に対処している点が異なっている。(2)多様性をいかしてビジネス成果につなげるリーダーシップの研究は始まったばかりであり、いまだ発展段階にある。
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