多様性をいかす上で、管理職が直面する課題を明らかにすべく(1)フォーチュン100社と500社(全米売上高上位100社と500社)および日経平均株価銘柄225社の外部資料を用い、日米企業の取組みの現状を調査、(2)海外の研究者・実務家と意見交換を行った。 (1)にあたり、企業の取組み姿勢を「抵抗」「同化」「分離」「統合」の区分(詳しくは谷口2005参照)に、「多様性尊重」を加えた。「多様性尊重」は、ビジネス価値が明確でないが、自社に多様な人材を育む環境を作る取組みである。フォーチュン500社の調査では、多様性をビジネスとして活用し変化の激しい外部環境に適応し、企業業績に結び付けていこうとしている企業姿勢とその海外拠点数には、有意な正の相関があった。これは、海外の研究者との意見交換における「『グローバル』が企業を多様性に取り組ませるキーワードになる」という点と一致していた。 次に、取り組みの日米比較については、フォーチュン100社では、「分離」または「統合」が8割を占め、「同化」は6%、「抵抗」が7%であった。フォーチュン500社では、6割以上が「分離」と「統合」を志向し、多様性を何らかの経営業績指標に結び付けようとしていた。一方、日経225社では、「抵抗」が11%、「同化」は45%、「分離」は7%、「統合」は6%しかなく、実際に多様性を用いて組織全体を変革しながら企業業績を向上させている企業は2社しか該当しなかった。また近年、「多様性尊重」の取り組み姿勢が増えてきており、全体の31%を占めていた。 日米比較から浮き彫りになった日本企業の課題は、ダイバシティの取組みを、マイノリティを救済する倫理目的で行うか、経営合理性のために行うかが、日本企業ではいまだ混同されたままである点だ。このことが管理職の多様な人材をいかすリーダーシップの開発と発揮のネックになっているようだ。
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