本調査の目的は、アジアに拠点を置く日系企業のローカルマネジャーが、海外日系企業に適応し高業績の結果をだすためのスキル、所謂コンピテンシーを見出すことにある。さらにその過程で、日本を含めたアジア地域におけるローカルマネジャーのスキルやコンピテンシー、習得方法を比較研究し、適応スキルのコンピテンシーモデルを構築することにある。本調査の目的を達成させるために、インタビューを主体とした質的分析手法による調査を実施した。サンプルは、アジアを中心にビジネスを展開している日系企業の協力を得て、日本、中国、香港、マレーシア、タイにて働く合計267名のローカルマネジャーである。さらに、日本(210名)とタイ(188名)の従業員にアンケート調査を実施し、スキル習得における学習方法に焦点を当てた比較研究を行った。 研究成果は(1)国際大学研究所のワーキングペーパーによる研究論文の掲載と(2)国際学会における研究発表である。(1)ワーキングペーパーの研究論文は、コンピテンシーに関するアジア5地域の比較研究論文である。本論文の意義として、先ず日系多国籍企業で働くローカルマネジャーが、日本、中国、香港、マレーシア、タイのそれぞれの国で、彼ら自ら必要としているスキル・コンピテンシーを理解することができた点にある。次に、共通のスキル・コンピテンシーに着目し、次元の異なる2つのコンピテンシーモデルを構築したことである。(2)国際学会発表の論文は、学習方法に焦点を当てた日本とタイの比較研究論文である。過去にアジア地域において日本、中国、マレーシアの学習方法の比較研究はあるが、日本とタイの比較研究は稀有である。従って、本研究の意義として、日本とタイの違いを多角的な見地から学習方法の違いを明らかにすることができた。
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