マレーシアにおける製造業での日系子会社124社の収益性に統計的に有意な正の影響を与える変数として、子会社の営業年数、親会社の従業員一人当たりの売上高、親会社の売上高純利益率が指摘できた。しかしながら、親会社のROEは有意ではなく、親会社の海外売上高、親会社の売上高研究・開発費比率は負の値で統計的に有意な差がある。親会社の海外売上高の増加すなわち輸出は、子会社の売上高を相殺することになり、それにより子会社の収益性が低下すると考えられる。親会社の売上高研究・開発費比率の上昇は親会社の費用負担が子会社の収益性に負の影響をもたらしていると判断される。また、サービス産業における日系子会社の収益性は、子会社の営業年数のみが統計的に有意な結果となっている。 日本への多国籍企業の進出については東洋経済の在日外資系企業総覧のデータベースより293社の子会社のデータを分析した。製造業かサービス業かというロジット分析より、製造業子会社は合弁形態の志向が高いが、サービス業では完全子会社として、より進出していることが分かる。また、製造業の方が、より多く外国人の経営者でありより売上高が大きいが、資産額では逆転している。資産の成長率を目的変数として、売上高成長率の高い企業ほど資産成長率が高いこと、受け入れ国での営業経験の長い企業ほど、資産の成長率が高いことを指摘できた。さらに、資産成長率を目的変数とした回帰分析より、子会社の売上高成長率、親会社の売上高成長率の高い企業ほど高くなるが、外国人従業員の数は少ないほど子会社の資産成長率が高くなることも分析されている。
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