研究概要 |
本研究の目的は、東北アジアを拠点とする中核自動車部品企業を対象に,1.自動車メーカーとの先行研究フェーズのR&D活動の仕組み、2.R&D成果の共有メカニズムと技術移転における中核部品企業の役割と機能、3.創造された技術知識の系列外および系列内企業間ネットワークへの伝播・移転メカニズム、を分析することである。そこで、2009年度には、現地調査の前に海外拠点技術移転研究会を立ち上げた。この研究会では多年間多国籍企業の現地調査を行っている横浜国立大学の周佐・チョ、両先生を参加させ、知見を拝借しつつ、インドトヨタ拠点の法人長の経験のある伊藤(中京大)を参加してもらい、海外子会社の経営に関する諸問題に関する議論を重ねてきた(5回)。これを通じて理論的な考察を行った。同時に、分析対象企業の国内及び韓国・中国(上海)の生産拠点および研究所(デンソー、マンド、現代モビス、カルソニックカンセイ、ルノー三星、油研、述べ12ヶ所)に対するインタビュー・現地調査を行った。また、技術移転の先例ともいえる造船産業に関する調査も補助的に行われた。 現段階で,現地調査による暫定的な仮説を幾つか構築することができる。まず、海外子会社は組織年齢によって、現地での自律権を確保しようとする。それは組織独自の内部メカニズムと対顧客への柔軟性が高くなることが要因と考えられる。次に、現代自動車のように、国内ネットワーク内に中核技術がやや乏しい場合、海外故会社の組織能力を活用できる競争技術提案システムをとる。それによって、海外拠点は自社の一定の技術能力を業務プロセスの中で移転されていくことが考えられる。 いずれにしても、研究課題3つは相互依存しているもので、的確な事例と特許データ分析で補う必要があり,次年度から取り組み予定である。
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