1. 研究の目的 本研究の目的は、標準化に伴って製品アーキテクチャが変化することによって、従来の企業戦略やビジネスモデルにどのような影響を与えているのかを分析し、企業が標準化から収益を上げるためにはどのようなビジネスモデルを構築すべきかを考察することである。日本企業の多くは高い技術力を背景にグローバルに標準化を推進しながらも、その標準化から収益を上げることができないというジレンマに直面しており、これらの一連の研究は大きな関心のひとつとなっている。申請者は、これまでこのような研究に従事し標準化戦略としてまとめてきたが、本研究は、これらの研究をさらに進化させるものである。つまり、本研究は、これまで所与とされていた製品アーキテクチャの変化を定量的に捉えなおし、さらに、事例分析による追試を行うことで、標準化戦略フレームワークの精緻化することに力点を置いている。 2. 2年度目(H22年度)の研究実績 2年度目は、初年度に開発したプロトコールに基づき、以下2つの事例について情報収集を行った。 (1) 自動車産業:インテグラルなアーキテクチャを持ちながら、電子化とそれに関連する組み込みソフトウェアの標準化によって、モジュール化の進展が進む可能性の高い産業として自動車産業を特定し、調査を開始した。調査対象は、欧州部品メーカーのボッシュである。同社は、組み込みソフトウェア規格であるAutosarを標準化して欧州規格とする動きの中で、中心的働きをしている。標準化の結果を展開するアウトプット市場として中国およびインドなどの新興国が位置づけられていたため、インドおよび中国でのボッシュ社の情報収集を行った。 (2) FAネットワーク産業:同産業は端末機器がモジュールとして標準化したネットワークで結びつくという構成をとっている。その代表的な事例として、自社規格をオープン標準化した三菱電機にヒアリングを行った。(1)と同様に、同社のインドや中国での展開を調査した。
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