平成21年度は、ブラジルの投資環境や労働事情、日系人を巡る状況等に関する関連文献のサーベイと日本国内でのヒアリングを行うとともに、3月にはブラジル現地調査を実施し、進出企業への訪問調査、日系企業関連団体・日系人関連団体他へのインタビュー調査を重ねた。 新たな「成長のフロンティア」としてのブラジルに対する関心が高まる中、目系人は、文化の橋渡し役としての「第三文化体」になりえる存在であると考えられる。しかしながら、今日のブラジルでは、日系のホワイトカラー人材にとって日系企業は必ずしも魅力的なキャリア機会を提供しているとは言い難い状況にある。その背景には、1.現地化の遅れ、2.優良欧米系企業に比して見劣りする賃金水準、3.公私の区別が曖昧な職場風土など人的資源管理上の問題があると考えられる。 一方、ブラジルの日系社会については、ブラジル社会への同化が進む一方で、目系人の日本語能力の低下やアイデンティティに関する問題が顕在化しており、言語と文化の継承がコミュニティとしての課題になっている。さらに30万人とも言われる日本へ出稼ぎ者に対する出国前・日本滞在中・帰国後のケアも日系社会の懸案事項の一つである。 こうした中、進出日系企業と日系社会が共存共栄を図るためには、日系の地場企業である「コロニア企業」も含め、相互の人的交流の強化に努めるとともに、日本への出稼ぎを通して日本語や日本の文化を体得した人材の活用を図ること、またそうしたプロセスを促進するために日本国内における日系人に対する行政面等での対応施策を整備することが求められると考える。
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