平成22年度は、前年度に引き続き日系ブラジル人を巡る状況等に関する文献研究を行うとともに、日本国内の日系ブラジル人の集住地を訪問し、日系人へのアンケート調査およびヒアリング調査を実施した。また、3月にはブラジル現地調査を行い、日系進出企業や日系人関連団体へのインタビュー調査を重ねた。さらに、サンパウロ市のブラジル日本商工会議所における招待講演やニッケイ新聞(ブラジルの邦字新聞)へのプレスリリースを通してこれまでの研究成果の発信に努めた。 在日日系ブラジル人へのアンケート調査によると、彼(彼女)らの多くが在ブラジル日系企業に対して「堅苦しい雰囲気」「現地化の遅れ」「グローバルなキャリア機会の欠如」といった否定的イメージを有していることが明らかになった。日系人の来日前の状況については、「両親や祖父母から日本(人)についてよく話を聞いていた」という者は多いが、自身が積極的に日本語の習得や日本の文化に触れるための行動を取っていたようには思えない。しかし一方で、子供の教育については「日本で大学へ行かせたい」「日本企業で働かせたい」「日系コロニアの行事・活動に積極的に参加させたい」 といった声が強い。これらは来日前の自身の行動に対する反動の一つと解釈できるかもしれない。 こうした中、今後日系企業には有能な日系ブラジル人の採用・定着に向けた人的資源管理施策の改革とその情報発信が求められると言える。一方、在日日系人の定住化が進み、「在日二世世代」の増加が予想される状況下、社会問題化しつつある日系ブラジル人子弟に対する教育問題の解決を図ることが日本企業の競争優位につながる「第三文化体」の確保に資するものと言えよう。
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