500社を対象とした大規模調査の結果、回収された質問紙を精査したところ、有効回答数は138であった。まず研究開発戦略に関する質問項目群から研究開発戦略のタイプを抽出するために因子分析を実施したところ、3つのタイプが抽出された。同様に、人材マネジメントについては、4つのタイプ、組織行動に関しては3つのタイプが抽出された。次に、3つのタイプの研究開発戦略のうち、革新的な研究開発成果に結びつくタイプを明らかにするために、研究開発戦略を独立変数、革新的成果を従属変数とする重回帰分析を実施したところ、「革新・品質戦略」のみが、革新的成果に対して正の効果を有していることがわかった。同様に、革新的成果に結びつく人材マネジメントのタイプを明らかにするために、重回帰分析を実施したところ、「透明で公平な人材マネジメント」のみが正の効果を有していることがわかった。最後に、革新的研究開発成果に結びつく組織行動のタイプを明らかにするために、同様の重回帰分析を実施したところ、「自立的行動」のみが正の効果を有していることが明らかになった。さらに、「革新・品質戦略」「透明で公平な人材マネジメント」「自立的行動」に、「戦略-人材マネジメント間の適合性」「戦略-組織行動間の適合性」に関するスコアを独立変数に追加したモデルを作成し、重回帰分析を実施したところ、戦略と人材マネジメント間の適合性は成果に対して効果を有しないことが明らかになった。以上の結果から、人材マネジメントは戦略に依存すべきではないということが示唆される。このことは、HRMにおけるいわゆるベスト・プラクティス論を支持するものであり、意義深いと言える。
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