平成22年度の調査では、平成21年度の調査対象者(入社4年目までの若手社員)の一部の上司(一部は先輩社員)計11名を対象にし、平成22年度調査での結果から得られた発見事実をさらに深く検討することを目的にし、主に以下の項目に関する聞き取り調査を行い、2カ年の蓄積として総合的な分析および考察を行うこととした。 (1) 部下・後輩(平成21年度調査対象の若手社員の一部)に対する関わり方。 (2) 部下・後輩(平成21年度調査対象の若手社員の一部)の成長度合いに対する評価・認識。 (3) 上司・先輩自身のキャリアおよび成長プロセスと、影響を受けた関係性とその変化。 平成21年度の調査の結果から、若手社員らを取り巻く人間関係の特性およびその成長は、上司(先輩)の関わり方、本人の対人的特性、それらに加えて従事する職務の特性という3つの要因の相互作用であることが示唆された。その結果をふまえて、平成22年度中には主に(1)および(2)についての分析および考察を進め、平成23年度も継続して行う予定である。現在のところ、たとえば以下のような事例に見られるように、伸び悩んでいる若手社員とその上司(先輩)との関係性に強い関心を持っている。 ・(営業職)成果が過度に重視され、また育成的視点に欠ける風土があるために、上司(先輩)が部下(後輩)の育成にエネルギーを積極的に注ごうとしない。 ・(営業職)かつて自分が受けた指導法を押し付け、それについてこない部下を突き放す。 ・(研究開発職)成長は自己責任であるという考え方から、部下(後輩)の育成にはあまり密接に関わらない。 また、職場全体として若手社員の成長に対する関心が低い、ジョブローテーションが少ない(さらに言えば人事部の人事権が弱い)といった要因のために、伸び悩んでいる若手社員がそのまま放置されているという事例も見られた。さらに、21年度調査では多様で緩やかな関係性の中で成長を遂げているように思われていたが、上司や先輩などとの発達支援的関係が構築されていないために、実は今後の成長が危ぶまれる事例もあった。このように若手社員の伸び悩みの要因を、関係性を主にしながらも多角的に捉えて、分析と考察を進めていく計画である。
|