平成22年度においては、前年度での「アクション・リサーチャー養成用教育プログラム」に関する先行研究のサーベイと医療機関での実践に基づいて、兵庫県豊岡市の宵田商店街(カバンストリート)の執行部による改革案の策定とその実施についてのフィールド調査を主体にして研究活動を展開した。 宵田商店街の執行部に対するヒアリング調査からは、商店街活動の改善策の立案と実施に際しては、環境要因の分析や問題点の改善策の立案・実施のみからでは、改革は大きくは進展しないことが明らかとなった。改革を成功させるためには、1、商店街の将来方向に関する強力な経営ビジョンの策定、2、そのビジョンを実現するための戦略の整合的な立案、そして3、ビジョンと戦略とその実施に利害関係者を巻き込むのに必要な簡潔なストーリーの展開が必要になることが明らかになった。 以上の点は、アクション・リサーチャー養成用教育プログラムの開発にとって大きな気付きとなった。というのは、従来のアクション・リサーチでは、組織変革とダブルループ・ラーニングなどの深い「気付き」(=リフレクション)の2側面が強調されてきた。しかし、その2側面をどのように連結するのかについてはほとんど意識されてこなかった。ここに従来のアクション・リサーチ、そしてアクション・リサーチャー養成用研究プログラムの弱点があったのである。 宵田町商店街フィールドワークと執行部のヒアリングから、上記の点を確認できたことは平成22年度の大きな研究成果であった。この研究成果をベースとして、平成23年度においては、この点のより詳しい検証を、ケース・ベースト・リサーチを通じて展開し、アクション・リサーチャー養成用教育プログラムの開発に結実させたい。
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