我々が現在取り組む研究の目的は、収益を追求する製薬企業における研究開発成果の決定要因を明らかにすることである。この全体構想の中で、本研究の目的は、日本製薬企業を研究対象として、製薬企業の収益に貢献する新薬の研究開発が、研究プロセスと開発プロセスに分離していることを示したうえで、それぞれのプロセスにおいて、研究開発投資の規模の及ぼす効果を分析することであった。 本研究では、日本の製薬企業を研究対象として、収益に貢献する研究開発指標であるブロック・バスターの研究開発が、研究と開発という2つのプロセスに分離していることを示したうえで、それぞれのプロセスにおける研究開発投資の規模の効果を、統計分析と事例分析から分析した。 統計分析の結果、研究プロセスでは、研究開発投資の規模の不経済が見られたが、開発プロセスでは、研究開発投資額の規模の経済が見られることが明らかになった。また、開発プロセスの成果であるブロック・バスターに、研究プロセスの成果である特許は全く影響を及ぼしていなかった。すなわち、統計分析の結果、日本の製薬企業において、ブロック・バスターの研究と開発が規模的に分離されていることが示された。 また、日本製薬企業の大手4社である、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイの事例分析から、これらの日本製薬企業は研究開発投資の規模の経済が見られる開発プロセスは担当するが、研究開発投資の規模の不経済が見られる研究プロセスはバイオベンチャー企業などの小規模企業に外部化するようになってきていることが示された。すなわち、日本の大手製薬企業4社の事例分析から、日本の製薬企業において、ブロック・バスターの研究と開発が規模的に分離していることが示されたのである。
|