研究概要 |
本研究は、地球環境の保全と企業の持続的発展に寄与する企業のコーズ・リレーティッド・マーケティング(以下CRM)のあり方とその具体的な展開方法を明らかにすることを目的とする。昨年度はCRMに関する国内外の先行研究のレビューと、コーズの環境性の開示方法の一手段としての環境ラベルに対する消費者調査を実施した。その結果、医療、福祉、文化、教育領域に比べると地球環境保全を対象としてCRMの成功事例は少ないこと、また、消費者の環境への関心は高まっているものの、商品の環境性を環境ラベル等により提示するだけでは消費者の受容性を高めることは困難であることが明らかになった。そこで今年度は、これらの知見を踏まえた上で、消費者の受容性を高めるためのコーズのコミュニケーション方法について検討した。具体的には、筆者がこれまでに研究を行ってきた消費者のエコロジー行動の規定要因に関する知見(西尾2005,Nishio & Takeuchi 2005,西尾・竹内2006)や環境コミュニケーション方法に関する研究(Nishio & Yagita 2006,八木田・西尾2008)に基づき、CRMに対する消費者の受容性に関する仮説を構築し、実証実験を通じて仮説の妥当性を検討した。その結果、コーズ(支援先/支援内容)とブランド間のフィットの高さが消費者の受容性を高める上でカギとなること、ただし、両者のフィット感はコーズの関連性(支援理由等)の説得性を高めること(認知面の改善)や写真等のビジュアル表示(感情面の改善)によって操作可能であることが確認された。以上のように、コーズの受容性の規定因とそれを高めるための具体的なコミュニケーション方法が明らかになった。
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