本研究は、地球環境の保全と企業の持続的発展に寄与する企業のコーズ・リレーティッド・マーケティング(CRM)のあり方とその具体的な展開方法を明らかにすることを目的としている。最終年度である本年度は、昨年度までの成果と議論を踏まえた上で、環境性や社会の持続性に寄与しうるコーズを、市楊の受容性や事業性といったビジネスの観点からどのように設計し、企業のマーケティング活動として実施するか、その具体的な方法を提示することが目的であった。しかし、昨年度末に発生した東日本大震災および原子力発電所の事故は、消費者の生活環境や企業のビジネスに大きな影響を及ぼした。そこで本年度は再度、前年度測定した調査を継続的に実施することにより、東日本大震災等が消費者のエコロジー意識や価値観、さらには、企業のCRMの受容性にどのような変容をもたらしたかを定量的に分析することにした。消費者向けの大規模調査を実施し、過去の調査データも含めて価値構造の経年変化を統計的に解析した結果、(1)日本の安全神話は揺らぎ、自分や家族の健康や安全への不安が総じて高いこと、そのような中で(2)消費者のエコロジー意識は震災後一様に増加しているわけではなく、被災体験の強さの影響を受けること、(3)民族の多様性やフェミニズム志向は低くなったこと、精神性と経済的成長を求めるようになっていることが示された。一方で、エコプロダクトや企業の社会貢献活動への評価は高まり、コーズマーケティングへの受容性はむしろ高くなっている等の構造が明らかになった。
|