研究課題
研究2年度目に当たる本年度は、昨年度に引き続き、ドイツ・ハンブルグ市のサターン店舗を見学すると同時に、パナソニック・ドイチェランド(ハンブルグ)を訪問し、メーカーの視点から見た家電小売流通に関するインタビュー調査を行なった。昨年度行なったパナソニックUKの調査とあわせ、メーカーによる新製品に関する知識の普及努力を前提に、低価格志向小売大手がフリーライドして小売マーケティングを展開するという昨年度作成した仮説は、このインタビュー調査でも浮き彫りにされた。同時に、本年度は、小売商側における経営知識・小売マーケティング知識の蓄積と優劣という分析視点から、東ヨーロッパや中欧ヨーロッパを含むヨーロッパ各国の小売企業の実態を一覧表として作成した。この表は現時点でまだ作成途上にあるが、この分析から、(1)メディア=サターンもDSGIも進出していない国々においては、ユーロニクスやエクスパートのような、小規模の家電小売店によって構成される仕入れグループ(buying group)が主流を占めていること、(2)DSGIは、店舗展開をせず、ピクシマニアなどのeコマースのみでヨーロッパの新たな国々へ新規参入するという戦略をとってきたが、そのいくつかは必ずしも成功していないこと、(3)一方、メディア=サターンは、いくつかの国々で巨大な店舗網による新規参入を達成し、先行のユーロニクスなどを押さえて首位の座を確保することに成功してきたことが明らかとなった。メディア=サターンの特徴ある分権的な管理システム(土地・建物の確保と初発の仕入れのみを本部が行ない、その後は店舗管理者に完全に一任する方式)は、同社のヨーロッパ展開において顕著な成功をみせている。だが、その一方では、店舗の管理者の判断によって製品の価格が異なるため、ヨーロッパー律のeコマースには向いていないという弱点をも抱えている。なお研究代表者は、上記の海外研究協力者とともにDSGIのケースをドイツで出版される英文著作に投稿すると同時に、分析の基礎となる知識経営学とマーケティングの関連について学会報告を行なった。
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Case Studies on International Management, edited by Dirk Morschett (Gabler, Germa-ny)
巻: 4th ed. ページ: 1-24