本研究の目的は、地域経営において「主導的存在ではなくなりつつある」が"究極のネットワーカー"の役割を担う自治体のマーケティング論の体系を構築・整備し、「施策のターゲットと実施者の多様性が増すほど自治体施策で地域ブランドをコントロールすることは難しくなる」中、地域経営の中間的成果たる「地域ブランド」の構築を自治体がどこまでマネジメント可能かについて明らかにすることである。 4年計画の初年に当たる本年度は、まず、拡張された「マーケティング」概念に「ネットワーク」概念を連結して分権社会における地域経営論の体系化にアプローチすることで("マーケティング・ネットワークの地域モデル")、従前の議論では困難であった何をどこまで明らかにできるのかについて、理論面と現実面に分けて考察した。次に、モデルの核を構成する「自治体マーケティング」について、学際的な本研究の特性から各種関連学会(日本商業学会/日本NPO学会/自治体学会/日本自治学会/生活経済学会/日本地域経済学会等)で最新学術動向の情報収集を行ないながら、先端的自治体経営を行っていると目される神奈川県の某自治体の事例について、インタビューを含めて情報収集を重ねた。 そして、(1) モデルのポテンシャルを発揮させるには少なくとも権限と財源の更なる移譲で"究極のネットワーカー"たる自治体のマーケティング変数を質・量共に改善すること、(2) ((1)の上で)企画・施策化・実施・評価などの財やサービスの供給過程を分解してマーケティング・モデル仕分けを議論し、各変数を体系的「に整理すること、(3) 企業のPPMに相当する枠組みが自治体経営でも非常に重要になっていることが明らかになったことを受けて、「自治体マーケティング」を実施するに際してその前提条件となる自治体PPMの分析手法を確立すること、以上の必要性があることを確認し、次年度計画の立案材料とした。
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