本研究の目的は、「日欧米の広告産業の構造-広告会社、媒体社、広告主および消費者-と広告の機能の変遷」について考察することである。今日、世界の広告界は大転換期にある。日本でも厳しい経済環境が続くなか、広告会社に対する広告主の意識はこれまで見られなかったほどの大きな変化を見せている。まず、日本の広告費の構造に大きな変化が見られる。2000年以降インターネット広告の進展がみられたが、2009年度の日本の広告費の媒体別比率をみると、テレビに続きインターネットが第2位となった。従来のマス4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)のうち、すでにラジオ、雑誌、そして新聞を抜き、現在全体の構成比の1割を占めるに至っている。 世界的に見ても各国で同じような兆候がみられる。英国に至っては2009年テレビを追い抜き、インターネットが第1位となっている。また、2008年9月のリーマンショックに始まる世界同時不況の影響も響き広告費の大幅減が起きている。しかし、インターネット広告費は下げ止まりを見せているものの、マス4媒体は減少傾向にある。つまり、経済の低迷のみが広告費の低迷の原因ではなく、広告そのものの構造が大きく変化しているとみることが出来る。 また、企業の宣伝部およびコミュニケーション関連部署の統廃合も進む中、新たな動きがみられる。それは広告代理店の人材が各企業の中に取り入れられ、従来とは違う携帯がみられるようになっている。これまで、戦後高度成長期にマーケティングとともに広告は企業の利潤を追求するための手段として多用されてきたが、近年広告に求められる機能に変化がみられる。それは、企業に社会的責任(CSR)が求められることにも関係する。広告を利潤追求の手段をみなすよりもむしろ社会的課題に広告の機能を求め始めている。それは、企業だけではなく、官公庁やNPOなどが社会合意形成をするための手段として広告を活用することが増えている。今後も日本および各国の現状と変化について時系列で情報を収集していく予定である。
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