ネットワーク分析を用いて、製品を点、製品間の消費の時間的経過を線と捉えることにより、購買・消費における連鎖性・階層性を考察した。ここで、連鎖性・階層性とは、たとえば、ワインの消費経験を積むことにより、廉価ワイン、中級ワイン、さらに高級ワインへと時間的に消費が変化することなどをいう(一般に、連鎖は時間的に不可逆であることに注意しよう)。さらに、ある製品(または階層)と別の製品群(階層)とを架橋する製品群を識別しようとした。たとえば、ドイツの白ワインとフランスの赤ワインとを架橋する、フランスの白ワインなどである。 改めて、製品(点)間の関係を示すマーケティング概念とネットワーク分析における概念との突合を試みた。そして、直接結合とクリーク(ネットワーク分析における概念)は、ブランド・スイッチ(マーケティング概念)の操作的表現のひとつであること、消費の連鎖性は、直接結合とクリークによって規定できることを示した。また、構造同値とは、マーケティング概念に照らせば、第三者の製品とのブランド・スイッチの仕方が同一(類似)である複数の製品を指すこと(両製品間の直接のスイッチではなく、第三者の製品とのスイッチの仕方が問題となる)、さらに、消費の階層性は構造同値と関連することなどを示した。 そして、消費の連鎖性・階層性を表現する構造として「クリーク構造」「中心化構造」「推移構造」「中心・周辺構造」「階統構造」を提示した。このとき、ネットワーク分析における概念を用いて、既存のマーケティング概念を操作化しながら、消費の連鎖性・階層性を説明することを試みた。 実務的示唆として、小売店の店頭、通信販売のカタログ、インターネット上のショッピング・サイトなどにおいて、同一階層にある製品群をひとまとめにしつつ、連鎖性の高い製品を隣接して品揃えすることなどを示した。
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