本研究では期間中(3年間)に、(1)交換相手との感情的な結びつき(感情的コミットメント)の形成メカニズムを検討すること、(2)この検討結果を反映させたモデル(修正版多次元的コミットメントモデルないしは新たな補完的モデル)を構築すること、(3)このモデルをB-to-B関係において経験的に検証することを目指しているが、本年度は(1)および(2)を中心に研究を行った。 まず昨年度行った、社会的アイデンティティ理論および記憶形成領域の文献研究に基づき、仮説モデルを構築した。続いてこのモデルを検証するためにサーベイ調査を行った。なおサーベイ調査はB-to-B関係だけでなく、B-to-C関係についても行った。 本研究の当初の計画は、社会的アイデンティティ理論を援用することで、交換相手との感情的な結びつきについて深く検討しようとするものであった。しかしながら一昨年度の文献レビューによって、社会的アイデンティティ理論の有用性は変わらないものの、それ以外に補完的な論理が必要なことが明らかになってきた。また関連性が考えられる様々な領域を探索したところ、記憶の形成過程に関する研究が本研究に援用可能であることを明らかになった。 そこで本年度は、これらに基づくかたちで仮説モデルを構築するとともに、その検証のためのサーベイ調査を行った。またB-to-B関係だけでなくB-to-C関係についても調査を行うことで、異なる環境下におけるモデルの比較を可能とした。なおこれら調査の分析は、来年度に行う予定である。
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