消費者の適正な商品選択に悪影響を及ぼす誤認広告や表示は、景品表示法によって規制されており、No.1といった強調表示をした広告(顧客満足No.1や売上実績No.1は優良誤認の可能性がある)では、例外条件や制約条件等の但し書きを併記している。しかしながら、消費者にわかりにくい表示になっているのが実情である。本研究では、No.1表示に着目し、(1)No.1表示への反応(一般論として)がいかなる個別広告の評価要因によって影響されるのか、逆に、(2)No.1表示への反応が架空ブランドのNo.1表示広告に対する態度形成にいかなる影響を及ぼすのかを検証した。自動車保険の広告情報に対する評価データを分析した結果、以下の知見を得た。 (1)売上実績No.1表示への評価は、個別広告の購買意図(標準化係数0.12)、ブランド知覚価値(同0.34)、注意書き表示のわかりやすさ(同0.27)、注意書き表示の信用性(同0.23)といった4因子により影響を受ける。顧客満足No.1への評価は、購買意図ではなく、広告への好意(同0.09)という因子で置き換わるが、他の3因子は共通の要因として影響する(パス係数は順に0.36、0.16、0.36)。 (2)各因子得点の平均は消費者属性で説明されると仮定し、ベイズ推定を行った結果、売上実績No.1モデルでは、「購買意図」因子得点の平均に対する新聞雑誌の影響と「ブランド知覚品質」因子得点における比較検討以外は全て有意となった。因子得点の平均は、40歳未満>40歳以上、新聞や雑誌広告に接触>それ以外、保険を比較検討する>しないで高くなった。顧客満足No.1モデルでは、「広告への好意」因子得点の平均に対する年齢の影響以外は全て有意となった。因子得点の平均は、40歳未満>40歳以上、新聞や雑誌広告に接触>それ以外、保険を比較検討する>しないで高くなった。 (3)No.1表示が役立つと思っている人では、広告表現案の違いによる反応の差は見られないが、役立つと思っていない人の場合、不確実性、結果の重大性などへの評価が低くなる傾向が見られた。
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