本研究の目的は、中高年のダイエットを中心とした健康行動の分野での行動変更モデルを開発することである。 本年度は、まず短期モデルとして、NECビッグローブの「みんなでダイエッチュ」のユーザーを対象としたアンケート調査結果を分析した。一緒にダイエット行動を行う仲間がいることによって、ダイエット行動を行う自信が形成され、短期的なダイエット行動を促進する効果が観察された。 その上で、長期的なダイエット行動継続のためには、食事と運動に関して「健康に良い」生活習慣の定着が必要であり、そのためには食事と運動に関する態度変容が必要で、それらの態度変容の規定要因としても「集団の効果」があると予想し、実証研究を行った。ここで集団とは、食事に関しては同居家族であり、運動については一緒に運動する仲間を指す。 データについては、DoHouse社のネットパネルを活用し、全国男性30代~60代から1000サンプルの有効回答を得た。その結果、マスコミ等で喧伝される各種のダイエット方法の実践の結果としてリバウンドが防止されるわけではなく、健康な食事と運動によってしか体重減少は実現しないことが分った。また、食事と運動に対する態度が変容し、健康な食事と運動が習慣化している状態が必要であることが示唆された。さらに、健康な食事習慣のためには同居家族の監視と励ましが、運動習慣の定着のためには一緒に運動する仲間の誘いや励ましが重要であることが判明した。 このことから、身近な人々によるソーシャル・サポート体制の設計の可能性が開けたと考える。医師によるアドバイスや特殊な自助グループによるサポートは社会的コストが大きく、数千万人にのぼると言われる対象者に容易には適用できないため、こうした身近なソーシャル・サポートは意義がある。今後は中高年男性をさらに細分化し、集団効果を取り入れた態度変容モデルの精緻化を行う。
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