本年度は実際のネットコミュニティでの発言の分析やアンケート調査を行い、健康によい行動の継続の要因を定量的に検証することが目的であった。 去年度実施した調査を分析した結果、中高年男性の肥満に影響を与えるものは「健康な食事」と「運動」であることが確認できた。食事に影響を与えるものは家族であり、運動に影響を与えるものはスポーツ・コミュニティである。よってネットコミュニティが特に効果を発揮する分野は運動であると考えられる。 この結果を受けて、継続的にスポーツを行っている中高年男性を対象にグループインタビューを実施した。調査対象者には、スポーツに関わるネットコミュニティの実際の発言ログを見てもらいながら、スポーツ・コミュニティへの参加と継続に影響を与える発言を抽出した。調査の結果、以下の諸点が判明した。すなわち、職場、PTA、ジム、プール、ネットなどで仲間を探索し、最後は知人の勧誘でコミュニティに参加している。入会時は各種webを使うが、コミュニティ参加後はメールやSNSのダイレクトメッセージなどを使い、掲示板などのネットコミュニティは使わない。 そこでさらに運動継続の要因を分析するためにアンケートを実施した。スポーツに関連するコミュニティへの参加と継続を「コミュニティのブランド価値」で説明する仮説を構築し、定量的に検証を行った。重回帰分析の結果「このコミュニティを再度選ぶ」に対して、「サービス品質知悉」、「行動志向」、「多くのことを考える」といった変数の影響が大きい。このコミュニティが自分に対してどのようなサービスをしてくれるかをよく知っているという「DART(対話、アクセス、リスクマネジメント、透明性)」の価値と、「ACT」と「THINK」の経験価値が重要である。記録への挑戦だけでなく、多目的な人間的接触を通じて多様な思考が触発されるようなコミュニティ形成が、運動継続のためには必要であることが分かった。
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