中国と台湾の中小製造企業のビジネス・ネットワークは、国という文化的要素によって違いが生じたのではなく、むしろ、それぞれの産業構造と経済発展状況に大きく影響されるということが今回の調査で明らかになった。今回の調査で発見したものの中に特に注目すべきなのは、これらの中小製造企業は自分が所属する産業において、どれくらいのビジネスチャンスがあるかによって、取引関係の安定性が変化するという点である。これは、1980年代以来、企業間取引研究の主流となった「取引コストの節減」研究が主張した「安定的な取引関係の維持」に対するアンチテーゼである。そして、この発見によって、本研究が引用した「複雑系ネットワーク論」にある「構造的空隙」と「創発」といった2つの概念が証明された。
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