本研究遂行期間であった平成20年秋(2008年)に米国の株式市場が暴落しそれを契機に個人の金融商品市場は新たな転換期を迎えることが予測されたため、科研費の繰り越し申請を行い、家計調査年報(貯蓄負債編)および「日経NEEDS金融行動データ」の2007年・2008年調査データの分析を行った。結果、金融規制緩和以降の金融資産選択行動とリーマン・ショックのインパクトの関係について新たな知見を得た。 第一に、消費者の金融商品選択行動を「金融リテラシー」と「コンサルティング情報希求」の水準を用いた4象限で分類することで、それぞれの投資態度やデモグラフィックの特徴が明らかにした。 第二に、資産選択に際しどのような情報源を重視しているかという点について、「金融リテラシー」の水準と情報源の関係を見ると、ヨリ専門的な情報を求める傾向にあり、「コンサルティング希求」の水準と情報源の関係では、インターネットやマネー雑誌を重視する傾向もあるが、それらに加えて、金融機関の窓口、セミナーなど、対人的な情報源を重視していることが示された。 第三に、金融商品の選択プロセスについて分析を行った結果、「金融リテラシー」も「コンサル希求」も低いクラスタでは、選択順が「業態→機関→商品」と金融機関の選択順位が高く、金融機関名を手がかりに商品を選択していることが示された。「コンサル希求」の高いクラスタでは、商品より先に販売元である機関を参照し決めている。リテラシーが高く、コンサル希求が低いクラスタでは、販売元の金融業態や機関は重視されず、商品を直接選択している割合が大きい。また、「機会主義的行動」をとる消費者は、金融機関にこだわらず金融商品の条件を見て選択する傾向が見られた。 以上のように、サイコグラフィックな変数を使用してセグメントを作成し、各々のセグメントごとのリーマン・ショック後の金融資産選択行動について差異を示したこと等の複数の成果を通じ、本研究の今後の金融マーケティング施策や学術研究への貢献が期待できる。
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