本研究では、家計調査年報(貯蓄負債編)および「日経NEEDS金融行動データ」の2007年・2008年調査データを用い、金融規制緩和以降の金融資産選択行動とリーマン・ショックのインパクトの関係について実証した。第一に、消費者の金融商品選択行動を「金融リテラシー」と「コンサルティング情報希求」の水準を用いた4象限で分類することで、それぞれの投資態度やデモグラフィックの特徴が明らかにした。第二に、資産選択に際しどのような情報源を重視しているかという点について、「金融リテラシー」の水準と情報源の関係を見ると、ヨリ専門的な情報を求める傾向にあり、「コンサルティング希求」の水準と情報源の関係では、インターネットやマネー雑誌を重視する傾向もあるが、それらに加えて、金融機関の窓口、セミナーなど、対人的な情報源を重視していることが示された。第三に、金融商品の選択プロセスについて分析を行った結果、「金融リテラシー」も「コンサル希求」も低いクラスタでは、選択順が「業態→機関→商品」と金融機関の選択順位が高く、金融機関名を手がかりに商品を選択していることが示された。この成果は2010年9月4日に日本FP学会で発表し、学会賞(奨励賞)を受賞した。 また、ベイズ型コウホート分析法を用いて、日米資産選択の比較を行った。(1)日本においては、株式・株式投資信託、債券・公社債投資信託等のリスク性金融商品は時代効果・年齢効果および世代効果の3効果が大きい。(2)定期性預金(銀行・郵便局)、生命保険、金融機関外貯蓄(社内預金等)等の安全性重視の商品は年齢効果が大きい。(3)通貨性預金(銀行・郵便局)は時代効果が大きい。(4)金融商品の選択基準に関してはどの項目についても時代効果の影響が大きく、経済状況に呼応して重視する選択基準が異なる、(5)金融資産選択行動に関しては日米で差異が見られ、米国ではリスク性金融商品の種類によってコウホート別の所持パターンも異なっている、といった結果を得、2010年9月の日本FP学会において口頭発表を行った。 以上のように複数の成果を通じ、本研究の今後の金融マーケティング施策や学術研究への貢献を果たすことができた。
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